それでは皆様、お酒の用意を!

20代の折り返しに突入する二児の母が、感情任せにつらつら書くだけ。

下の続き

男は朝になっても起きなくて、誰だコイツって気持ちのまま学校に行った。
でも学校から帰ったらいなくなっていて、母に男の事を尋ねたら「お店のお客さん、酔っていたから家で休ませていたんだよ」的なことを言われた。
そっか、お店のお客さんなら仕方ないなって思っていたけど、全然アウト。あんな嘘で騙されていた自分は可愛かったな。

次に"お店のお客さん"に会ったのは、母の店。
仕込みがあるから、カラオケでも歌って待っている?という提案に喜んで着いていった。もちろん弟も一緒に。

私と弟はカラオケが大好きで、あのとき歌っていたのはラムのラブソングだった。
変な所だけちゃんと覚えているのは、私がノリノリで歌っていた所に、男が突然ハモってきたから。マイクは持っていなかったけど、そこそこの声量だった。
歌い終わって妙な空気が流れると、母がキッチンから出て来て「ヒロだよ」と男を紹介した。
母の仕事柄、突然、○○さんだよ、と紹介されることは多々あったから何の疑問も抱かずに納得した。
母がまたキッチンへ戻ると、ヒロは「歌、上手だね」って褒めてくれて、歌うのを止めた私達に手品を見せてくれた。
(この時私は、ヒロが隣で寝ていた男とは気がつかなかった。男の正体を知ったのは、もっとずっと後)

親指が切れて元に戻る手品、割り箸がほぼ一本鼻に入っていく手品、意識を持ったハンカチが浮かび上がる手品。
子供騙しだったけど、子供だったから騙された。
今なら全力で笑うだろうな。特に、割り箸がほぼ一本鼻に入っていく手品はヒロの顔が物凄く痛そうで、ヒヤヒヤしたけどめちゃくちゃ笑えた。笑ってた。

それからヒロは一緒にご飯を食べに行くようになった。
きっと色んな所に連れて行ってくれたんだろうけど、しっかり覚えているのは大きなステーキ屋さん。
目の前でパフォーマンスを取り入れた調理をしてくれる有名なお店だけど、行った店舗はパフォーマンス無しのお店だった。
母がエスカルゴを頼んで食べることを強要してきたり、子供用のジュースの入れ物がめちゃくちゃ可愛かったり。

でも食べてる途中に眠くなって、ヒロの車で寝てた。


ヒロがいつから家に来るようになったのかも、もう覚えていない。
ヒロの実家から持ってきた大きなソファーが家に置かれる頃には、もう住みはじめていた気がする。

思い出したくても思い出せないのが、辛い。
本当に辛い。自分の記憶力の低さにラリアットしたい。

けどヒロが来てから夜は寂しくなかった事はちゃんと覚えている。こんな事ばっかり、ちぇ。